2011年5月22日日曜日

5月9日~15日、16日~22日「ヘッジファンドの真実(後編)」

英語勉強、9日~の週は、4時間、16日~の週は5時間でした。

読者の皆様へご報告。
しばらく、TOEICに専念する為に、ブログの更新は2週間に1回とさせていただきます。
何卒ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

【今週の本】

「ヘッジファンドの真実」若林秀樹著

4章 ヘッジファンドの運用はいかになされているか
銘柄選択は、「どの銘柄をどの価格でどのくらいの株数で、どのタイミングで買い持ち、あるいは売り建てるか」が肝心である。銘柄の選択の方法は次のようなやり方がある。
第一は、あらかじめ代表的な銘柄群や得意なセクターを決めておいて、そのカバレッジの中で主要な企業を常時ウォッチし、独自に業績予想を立てておく。そこから「会社四季報」や証券会社などのセルサイド・アナリストのコンセンサスと比較して、好業績あるいは割安な銘柄をロング、そして業績不調で割高な銘柄を見つけてショートを入れるというものである。
第二は、ある程度カバレッジはするものの、同時に「相場のテーマ」をいくつか考え、それに沿って成長が期待できる割安な銘柄群をロングに入れる。他方でカバレッジ銘柄群などから業績悪化や割高と判断する銘柄をショートに入れる。
第三は、特にカバレッジは決めずに「チャートやセルサイド・アナリストの推奨などから幅広く銘柄群を選ぶ」という方法である。あるいは、セルサイド・アナリストがカバーしていない中小柄銘柄から割安なものを選ぶというやり方もある。
第四は、ある程度のトップダウンアプローチで、割高なセクターと割安なセクターを見つけ出し、その中で最も代表的な銘柄、あるいは相場との感応度が高い銘柄などを選ぶ。
第五は、個別の会社訪問はあまりせず、いろいろなデータベースをもとに独自のバリュエーションや業績指標から、割安なものと割高なものを選ぶという方法である。

5章 ヘッジファンド批判に答える
ヘッジファンドに対しては、誤解に基づく偏見に満ちた報道もいまだに多い。確かに、ヘッジファンド業界自身が「私募」ということもあって、一般に積極的に宣伝をすることができず、マスコミに対しても、取材協力あるいは情報開示に消極的であるという事情もある。それゆえ実態が不透明という指摘もされる。実際は、年金基金等も、リスクが低いという認識からヘッジファンドを評価して導入を進めており、本来は一般個人などにも向いている金融資産であろう。

6章 なぜアナリストからヘッジファンドへ転じたのか
アナリストは、レポートなどを通していろいろな提言はできるが、所詮、法的根拠はない。対産業界という意味でも、対投資家という意味でも「外野席で吼えている」に過ぎない。ハゲタカファンドなどと一緒にしてほしくはないが、少なくとも株主総会で株主という立場で意見してこそ、法的な裏付けのあるものとなる。最先端と言われるヘッジファンドの運用手法を知り、それを産業界に伝えることで、かつてのような失敗を避けることができるかもしれない。これまでハイテク業界と株の世界の橋渡しを任じてきたつもりだったが、ヘッジファンドの世界に自ら身をおくことで、本当に怪しいことや日本の国益に反することがあるなら、それを伝え、そうでないならハイテク産業とヘッジファンドの懸け橋になりたい。

7章 私の株式市場論
ライブドアの堀江前社長に続いて、村上ファンド前代表の逮捕、有罪判決。ここぞとばかりに、「金儲け至上主義はけしからん」「規制緩和は行き過ぎだった」「だから株やファンドは危険だ」という大合唱が湧き起こってきた。しかし、利益を出せず、税金も配当も支払わず、従業員のリストラで急場を凌いでいるような「上場」企業の経営者はそれで許されるのだろうか。「金儲けは悪だ」というような極論さえ飛び出してきている。金儲けを批判するご本人は、売上を立て、利益を上げ、国に税金を納め、株主に配当を還元し、銀行に借金を返し、従業員の雇用を確保してきちんと給料を支払うという経営者の責務を果たしていると、堂々と胸を張れるだろうか。金儲け批判は、粉飾決算をせず、十分に利益を上げている経営者だけに言う資格がある。また、そういう企業にはアクティビストの付け入る隙はない。村上世彰氏などが責められるべきは「法令違反」「背信」という逸脱行為なのであって、「金儲け」を追及したことでは絶対にない。

2011年5月9日月曜日

5月2日~8日 「社会貢献でメシを食う(後編)」「ヘッジファンドの真実(前編)」

今週は英語の勉強時間は4時間でした。

【ひとこと】
新たに守るものが一つできましたので、より頑張っていきます。

【今週の本】
「社会貢献でメシを食う」竹井 善昭著

4章 企業の力で社会貢献
日本のCSRには、3つの段階があったと考えられる。
まず、CSR1.0の時代。これは「慈善」の時代でもある。企業に求められていたのは、NPOへの寄付。要するに、企業は金を出すだけという時代だった。しかし、企業だってものを考える。お金を出すなら、自分たちにとってもう少し意義のある出し方をしたい。それで出てきたのが「本業を通じたCSR」、あるいは「本業を活かしたCSR」という考え方だ。これがCSR2.0である。CSR2.0の事例には、たとえばコーズ・マーケティングがある。本業である「商品を売る」という活動に寄付を組み込んだ仕組みで、ボルヴィックの「1for10ℓ」や、王子ネピアの「千のトイレプロジェクト」、アサヒビールの「うまい!を明日へ!」プロジェクトなど、数多くの企業がこの手法を取り入れている。
CSR3.0とは、「本業とCSRの統合」という考え方である。これからの企業は、本業の中にいかに社会貢献を組み込んでいくかが問われている。だから、「本業を通じたCSR」ではなく、「本業とCSRの統合」なのである。実際に、CSR2.0からCSR3.0への移行はすでに始まっている。代表的な例が「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだ。これまでファーストリテイリングは、着古したユニクロ製品を店頭で回収して、それを難民キャンプの人々に提供するというCSR活動を行ってきた。これはアパレル・メーカーが自社の製品と販売網を活用して行う、典型的なCSR2.0の活動である。そして、20107月。ファーストリテイリングはCSR3.0に突入した。グラミン銀行グループと提携して、バングラデシュに合弁会社をつくり、ソーシャル・ビジネスを展開すると発表した。貧困層でも購入できる低価格商品(1ドル程度)を開発・販売。柳井代表は記者会見でこんな発言をしている。「これまで主に先進国を対象にビジネスを広げてきたが、世界にはそれ以外の国に住む人々が約40億人いる。バングラデシュは将来性のある国。人々の生活をサポートし、世の中の役に立つソーシャル・ビジネスを開発することで、将来的に大きなビジネスになる」

5章 プロボノという働き方
プロボノは専門的なスキルでNPOなどをサポートする新しいタイプのボランティアである。様々な分野のプロが自分たちの専門的なスキルを無償でNPONGOに提供する。プロにしかできないボランティア。それがプロボノ。たとえば、弁護士が契約書を作成する。公認会計士が経理や財務の状況をチェックする。その他いろいろ。日本では2010年がプロボノ元年といわれるくらいで、最近になって急速に関心が高まってきた。
これからのプロボノには、「お金を生むスキーム」をつくることも求められてくる。それには、世の中の投資資金をいかに社会セクターに呼び込めるかが課題となる。SRIはそのひとつの方法だが、もっと直接的に投資家や企業のお金が、社会起業家やNPOのプロジェクトに流れるような仕組みをつくることが求められるだろう。

6章 それでも僕らは社会貢献をめざす
最後にここで僕自身のことを少し語らせてもらう。僕の本業は、マーケティング・コンサルタントとメディア・プロデューサーで、長年にわたりこの分野でメシを食ってきた。そんな僕が4年ほど前、たまたま社会起業家に関する本を読む機会を持つ。それは、ビジネスの手法で社会問題を解決するという衝撃的な内容だった。
かつて、アップルのスティーブジョブズはペプシコーラの社長だったジョン・スカリーをこんな口説き文句でヘッドハンティングした。
「このまま一生、里臼井を売り続けるのか、それとも世界を変えるチャンスをつかみたいか」あまりに有名な、この殺し文句にやられて、スカリーはペプシコーラを辞めアップルに移籍した。1938年のことだった。「世界を変える」という言葉には、それほどまでに大きな磁力があり、魔力がある。そして、世界を変えようと頑張っている人間はかっこいい。
人は誰でも、価値ある人間になりたいと思っている。社会貢献は僕らに価値を与えてくれる。自分が少しは世の中の役に立つ人間なのだという気持ちにさせてくれる。その気持ちが、自分自身に希望を与えてくれる。世の中に希望を生み、自分自身も希望を抱ける。希望に満ちた世界をつくり、希望に満ちた人生が得られる。こんな仕事は他にない。
だから僕らは社会貢献をめざす-

【ひとこと】
世の中の移り変わりは速いと実感する。

「ヘッジファンドの真実」若林秀樹著

1章 ヘッジファンドとは何か
意外に思われるかもしれないが、ヘッジファンドはハイリスク・ハイリターンを求める特別な最終投資家、あるいは一部の富裕層によって注目されたため膨張したのではない。むしろ、リスクを嫌う年金基金といった最終投資家にも、着実に普及が進んでいる。存在価値はどこにあるのか。2004年の日経企業年金実態調査によると、全体で20%程度、厚生年金でも20%がヘッジファンドを含む「オルタナティブ投資」を取り入れている。2006年には全体で40%強だが、厚生年金では50%強までに増えた。最終投資家にとってのヘッジファンドの魅力は「リスクが小さく、リターンが優れている」「分散効果が期待できる」ことである。つまり、マスメディアの認識とは異なり、実際の業界ではハイリスク・ハイリターンからヘッジファンドが好まれているわけではない。伝統的なファンドにない特徴は「成功報酬」を導入し、運用者自身もファンドに個人資産の多く入れている点にある。

2章 ヘッジファンドはどんなストラテジーがあるか
まずはビークル(入れもの)によって「シングルヘッジファンド」「マルチストラテジー」「ファンドオブヘッジファンズ」に大別される。マルチストラテジーは複数のストラテジーを使うもの。ファンドオブヘッジファンズは、ポートフォリオに組み入れる銘柄のように、いくつかの異なるストラテジーあるいは同一のストラテジーの複数シングルヘッジファンドを傘下に置き、それらを組み合わせていく投資戦略だ。
シングルヘッジファンドのストラテジーは、大きく分類すると次の4つに分類される。
セキュリティ・セレクション・・・企業分析に基づき、ロング・ショートを併用する最も古典的なヘッジファンド運用法。
ディレクショナル・トレーディング・・・株式・債券・通貨・商品などの各市場についてチャートによるテクニカル分析や定量モデルを使い、トップダウンアプローチ式に、その方向性を予測して賭ける運用法。ディレクショナルとは「方向性」という意味。
イベント・ドリブン・・・合併などのM&Aがらみのイベントや割安な低格付け証券の信用リスクを利用する運用法。
レラティブ・バリュー・・・株式・債券・通貨・商品のロング・ショートの組み合わせで価格格差を利用する投資法。

3章 ヘッジファンドとはどんなビジネスモデルか
ヘッジファンドの事業は、初期コストが意外と高いが、ある程度の運用額になると、急速に利益が出てくることが大きな特徴である。たとえば運用会社の収入は、運用金額に対して12%の「管理報酬」と1020%の「成功報酬」からなる。初期では「シードマネー」と言われるスタート時点での資金集めと、それを元にどの程度の運用成績を上げるかが重要になる。一般の事業を起こす場合でも「景気サイクル」などのタイミング
は重要だが、ヘッジファンドの場合はその要素が極めて大きい。ヘッジファンドの運用金額で、ひとつの峠は3050億円だろう。管理報酬だけなら運用会社の収入は数億円である。そこから出てくる運用助言会の収入はさらに小さく、利益はほとんど出ない。ヘッジファンドを始めようと思ったら、資本金と1年の運転資金、自分自身への資金など、最低1億円程度は用意し、準備半年、助走半年は無給で頑張る。さらに半年の運用成績次第で、運用金額3050億円のクリティカルポイントに達する。ここが勝負どころの分岐点で、23年後には成否が決まる。

【ひとこと】
今までヘッジファンドとはベールに包まれ謎めいていたが、この本はヘッジファンドについて非常にわかりやすく書いている。


 

2011年5月1日日曜日

4月25日~5月1日「中国で儲ける(後編)」「社会貢献でメシを食う(前半)」

今週は英語の学習が4時間でした。

【ひとこと】
やるべきことが多いので、効率的にしていかないとなかなか英語学習の時間がとれない。
TOEICまであと1週間をきりました。

【今週の本】
「中国で儲ける」田中 奈美著

3章 人材を掌握する
天津駅に程近い下町の通り沿い約10メートルにわたって、数十人の男女が手持無沙汰に佇んでいる場所がある。ここは天津の「青空人材市場」である。歩道に並ぶ男女は地方から仕事を求めてきた出稼ぎ労働者である。中国の人材募集は、通常、知人のつてや、人材紹介者などを利用するケースがほとんどだ。
「じゃじゃ馬を、雇ったことがあるんですよ」と、野村総研の松野氏は話す。「日本の大学を出て、日本語もうまい。すごく頭が切れて、勘がいい。だけど、ともかくわがまま。態度が悪い。遅刻はするし、出張したと言って実は友達と会っていたりする」日本の本社からは、態度がよくない彼女へのクレームがとても多かった。「でも、それはわかるんだけど、そんなこと言ったら、くそまじめで上品だけど、能力そこそこぐらいのしかとれない。中国で成功しているやつなんて、どこか変じゃない。そういうやつじゃないと、勝てないわけですよ」日本式の暗黙の了解や、「常識の範囲」は通じない。だからこそ法的根拠にのっとった明確なルールが必要となる。日本の「普通」が、中国の「普通」でないことは山ほどある。例えば、中国には未消化の有給休暇に対して、一日当たりの賃金の300%を支払うという規定がある。そうすると、休まないで、その分、現金でもらおうという社員も出てくる。また、病欠の場合、日本では有休を消化するのが一般的だが、中国では医療休暇があり、診断書を出せば休むことができる。

4章 マーケットを広げる
実際、何のツテもない外国で、個人がローカルの顧客を得るというのはなかなか難しい。「最初はコネもツテも全然ないので、テレアポから始めました。あと、飛び込み営業」北京のアキバ「中関村」近くで、IT企業を経営する山本氏は、設立当時をそう振り返る。日本では大学時代、ベンチャーについて勉強するサークルに所属し、自身も学習塾を経営していいたそうだ。卒業前には学習塾を親に売却し、その資金で中国とアメリカに留学、発展している国の発展している産業で起業したいと、2006年、20代半ばで北京にIT企業を構えた。
北京には有名な老舗ブランドデパートが数軒あう。東京でいえば銀座三越や日本橋高島屋といったステイタスだが、北京のそれは、値段が高いばかりで商品はぱっとせず、店員のサービスも決してよくない。面子やステイタスが重視される中国では、誰が見ても価値が明確なブランドの消費性向は、おそらく日本以上に大きい。だからよいものであっても、わかりやすいブランド性のないものは、中国の市場に食い込みにくい。またたとえ、日本では有名なブランドでも、中国での認知度が低いと、売りにくいという状況もある。
中国人はブランドを好む。しかし同時に、ブランドを信用していないところもある。なぜなら、中国はニセモノだらけだからだ。だからこそ、知り合いを通じて広がる口コミが、日本以上に非常に重要になる。

5章 トラブルを回避する
中国では、売掛金の回収が難しいという。支払いは少なからぬ場合、期日に行うものではなく、場合によっては、金ができたときにするものですらないからだ。それは、その支払いをしなければ、自身が不利益を被る場合、例えば顧客が求めている商品を納入してもらえなくなるといった場合に行われるものである。さらに、支払い先には、優先順位があり、リストの下位に位置づけられてしますと、未回収の無限ループにはまりかねない。こうした状況にあって、企業の支払い担当者は、いかに支払いを遅らせるかが、腕の見せ所となる。担当者同士が、どれだけ支払いを遅らせたかを自慢しているのをよく聞くこともある。
中国ビジネスでは、「郷に入っては郷に従え」と、しばしば言われる。ただ、同じ郷に入るとしても加減が難しいのが「袖の下」だ。コネ社会の中国で、ビジネスを展開する以上、役所との関係は非常に重要となる。なぜなら、許認可から運営に至るまで、あらゆる面で行政と関わるからだ。例えば、大手外資系企業の商品が検査当局の調査にひっかかり、欠陥が検出されたとしてもリコール騒ぎになることがある。実際、欠陥があることもあるが、ほとんど言いがかりでないかという場合もあり、そのときは、会社が検査当局にそれなりの謝礼をしていなかったため、ご機嫌を損ねたのだろうという話が流れる。
中国でビジネスを展開する上で、現地の人の強力を得ることはとにかく重要だ。そしてその分、人に関するトラブルがまた絶え間ない。会社の印鑑は非常に重要なもの。それを押したら、契約でもなんでも効力を発生してしまうため、厳重に管理する必要がある。
これまで挙げたトラブルの例は、中国ビジネスの世界では、氷山の一角のさらにその上に載った氷の破片か、あるいはそのまた結晶の一つですらないかもしれない。中国での生活は、常に小さなギャップと齟齬と矛盾の連続だ。日常でも理解しがたいことが、非常にしばしば起こりうる。例えば、喫茶店で12元のオレンジジュースを注文したところ、会計の際に20元を請求される。誤りを指摘すれば、12元のオレンジジュースはすでに販売を中止しているので、20元の生絞りのオレンジジュースを提供したと言われる。

「社会貢献でメシを食う」竹井 善昭著

序文 なぜいま、ソーシャルイノベーションなのか?
ソーシャルイノベーションが脚光を浴びたのは、バングラデシュのムハマド・ユヌス博士とグラミン銀行が2006年のノーベル平和賞に輝いたことが契機だったかもしれない。もうひとつの理由に、各国における社会的課題に対する財政負担の急増が挙げられる。政府の仕事は官僚的で非効率、しかも採算を度外視している。特にリーマンショック後の先進国の財政状況は極めて深刻である。税金を使わずに民間の創意工夫によって、山積みする社会問題を解決せざるを得なくなっているのである。

1章 社会貢献を仕事にする
2010
年、アメリカの大学生就職人気ランキングで、NPO1位となった。「Teach for America」というNPOだ。グーグルやアップルなどの超人気起業を差し置いての1位である。TFAはアメリカの低所得者層が住む地域などの公立校に、イェール、シカゴ、コロンビア、デュークなどの一流大学卒業生を教師として2年間派遣する。学生はゴールドマンやJPモルガンなどの一流企業の内定を蹴ってまでTFAに就職する。
社会貢献に関しては、古い常識を持った人間もまだまだ多い。たとえば、学生の本分は勉学であるから、ボランティアなんかやっていないで勉強しろという意見もある。しかし、勉強とは講義を聞いたり、本を読むだけではない。学生の勉学とは、自分で課題を発見して解決方法を考えることであるはずだ。古くて間違った常識のひとつに、「自己犠牲」という考え方がある。実は、これこそが日本の社会セクターの成長を阻害してきた最大の問題点といってもよい。自己犠牲には笑顔がないからだ。自己犠牲は、世界の悲惨な状況におかれた人たちと共感しあうことはできる。しかし、僕らは誰かと嘆きや悲哀を共有したくて社会貢献するわけではない。僕らが共有したいのは絶望ではなく、希望だ。
最後にもうひとつ、間違った常識を正しておく。それは「社会貢献はビジネスで成功して金持ちになってからやるべきだ」というものだ。成功には終わりがない。それなのに、「ビジネスで成功したら社会貢献」って言っていたら、いったいいつやるんだ?という話になってしまう。社会貢献に取り組む人間には共通の悩みがある。「それでメシが食えるのか?」という悩みだ。日本のNPOスタッフの平均年収はざっと200万円と言われている。「30歳定年説」というものもある。女子アナのことではない。日本のNPOのスタッフは、30歳になると辞めていく人が多いということだ。その理由の多くは、経済的事情である。30代になると、急に現実が襲いかかってくる。生きていくには金が要るという単純な真実に気付く。一方、アメリカはどうだろう。以前、とあるNPO法人の代表に年収を聞いてみた。「10万ドルくらい」と答えた。年収1000万円ほどのNPOの経営者など、日本ではほとんどいないだろう。これが日本とアメリカの違いである。さらに、アメリカにはファンドレイザーという職種がある。NPOのための資金集めのプロで、全米ファンドレイザー協会という団体もあり、会員数は2万人を超えているという、つまり立派な職業として確立されているわけである。このファンドレイザーの平均年収は約800万円。トップクラスになると数千万円になるという。

2章 社会起業家になる
では実際に、事業立ち上げまでの方法はどうしたらいいのか。具体的な方法は様々だが、そのポイントとなる事柄をわかりやすく伝えよう。
ビジネス・モデルをつくるにはニーズの発見がまず必要だ。ソーシャル・ビジネスの場合、ニーズの発見とは自分の問題意識の裏返しでもあるので、問題意識のない人間にはニーズは発見できないのだ。自分の中で明確な問題意識を持っている、あるいは感情を揺さぶられるような社会問題に出会ってしまったという人は、第一段階クリアなので、そのニーズが何かちゃんと調べてみよう。このとき大事なのは、必ず現場を見るということだ。本を読んで勉強することは大事だが、本当のニーズは現場を見なければわからない。ニーズとミッションがはっきりすれば、次は事業コンセプトだ。実がここが一番肝心なところ。途上国の子どもたちに本を届けることがミッションだろして、「途上国に一万館の図書館をつくる」という事業コンセプトを考えた場合は、大きく活動する必要があるし、そのためには大きな組織をつくる必要がある。一方、「日本の優れたマンガ文化を活かしたマンガ教科書をつくり、途上国の子どもたちに届ける」という事業コンセプトで起業するのであれば
強力してくれるマンガ家を探し、なんらかの方法で印刷費を稼ぎ、本を印刷するだけでいい。あとは、どこかで大手のNGOとタイアップできれば、できあがったマンガ教科書は、そのNGOが現地に届けてくれるので大きな組織は必要ない。このように事業コンセプトによって、ビジネス・モデルは変わってくる。事業コンセプトが決まればいよいよビジネス・モデルの構築だ。ここで重要となるのがマーケティングの考え方だ。詳しく知りたい人は、マーケティングの専門書を読んでほしいが、重要なのは“差別性”と“優位性”だ。差別性とは、他の社会起業家やNPO/NGOと自分たちがどう違うのか、ということ。優位性というのは、自分たちが他団体と比べて優れているところは何か、自分たちのビジネス・モデルのどこが他と比べて優れているか、ということである。
3章 NPO/NGOに就職する
最近は、NPOにもソーシャル・ビジネスの概念が浸透してきている。特に外資系NGOのビジネス開発力は凄まじい。アメリカの大手NGOなど、クリスマスシーズンには通販業者顔負けの素晴らしい商品カタログをつくり、ギフト商品を売っている。意外に思うかもしれないが、いまNPOの就職市場は買い手市場だ。倍率も高いし、高偏差値の大学の学生もワンサとやってくる。このような就職戦線を勝ち抜くための王道はやはりインターンである。または、就職希望のNPOでボランティアをやるのもいいだろう。
NPOの場合、大きく分けてふたつの部門がある。「現場」と「後方支援」の部隊だ。小さなNPOの場合は、スタッフ全員が両方をこなす必要があるが、中規模以上になると、部門ごとにチームを分ける場合が多い。「現場」というのは、途上国で井戸を掘ったり、地雷を撤去したりなど支援対象者と直接関わる活動を担当する。一方、「後方支援」というのは、経理などの一般的な事務作業もあるが、NPOとして重要な仕事といえば、「ファンドレイジング」と「コミュニケーション」だ。

【ひとこと】
この5年・10年で世界の経済は構造的に大きく変わったような気がする。